劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

Special

スペシャル

――暁佳奈さんの原作小説「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を、まず最初にTVアニメのシリーズにしようとなった経緯から教えていただけますか?

原作は第5回京都アニメーション大賞の初めての大賞受賞作だったのですが、手紙で想いを届けることの尊さを描いた物語がデジタル時代の現在を生きる審査員の心に染みて、満場一致で受賞が決まりました。そこから「この深みのある原作を映像化したいよね」という意見が京都アニメーション・アニメーションDoのスタッフから湧き上がって、それがTVシリーズに繋がっていきました。

――今回の『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の制作も、TVシリーズを始めるときから想定されていたんですか?

作品始動時は想定していませんでしたが、TVシリーズがヴァイオレット・エヴァーガーデンの生きる姿を描いてきましたし、彼女のその先の未来を描くことがこの作品の帰結点だとは思っていたので、『劇場版』ではTVシリーズの物語を踏まえた上で、そこをしっかり描くことにしました。

――TVシリーズの放送が終わってから『劇場版』は始動したんですね。

TVシリーズを制作している頃には少し話は挙がっていました。TVシリーズの第10話でアンという少女のもとにヴァイオレットの代筆した手紙が50年後までずっと届くというエピソードがありました。その制作をしていた際、手紙が届き続けている頃のヴァイオレットはどうしているんだろう?最後にはどうなったんだろう?という話はスタッフともしていました。それが、彼女の“未来を描く”という今回の『劇場版』のコンセプトに自然と繋がっていきました。

――昨年2019年9月6日に公開された『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』とはどのような兼ね合いで進行しましたか?

『外伝』と『劇場版』の制作は同時に進めました。『外伝』は藤田春香監督が初監督を務め、彼女のチャレンジも含めて作品にしたものです。『外伝』はあくまでも“外伝”ですので、『外伝』を受けてさらにヴァイオレットの未来を描く『劇場版』で帰結するという構想でした。

――『劇場版』は映画のオリジナル・ストーリーですね。

そうですね。そもそもTVシリーズが原作とは表現が異なりますので『劇場版』もおのずとオリジナルになっています。しかしながら、原作者の暁佳奈さんともシナリオや設定の情報は共有していまして、原作で最も大切にされていたエッセンスは『劇場版』にもきちんと反映されています。原作をお楽しみいただいた皆さんにも、また違う味わいで彼女の未来をお楽しみいただけると思います。

――脚本はTVシリーズから吉田玲子さんが書かれていますが、彼女の脚本の魅力はどんなところにありますか?

ヴァイオレット・エヴァーガーデンをひとりの女性として丁寧に描いてくれたところでしょうか。ヴァイオレットをセンターに立たせた上で語り部としても機能させつつ、最初は何もできなかった彼女がさまざまな人との出会いや彼らから依頼された仕事をこなすうちに成長していく過程を本当に繊細に表現されていたと思います。石立監督とも二人三脚で進んでいった印象があります。

――石立監督と見えている世界が一緒だったわけですね。

そうですね。ドラマの方向性は一緒でしたし、さらに、世界観設定の鈴木貴昭さんがふたりの思い描く世界観の土台を作ってくださったので、彼らが共有する作品のイメージがより強固なものになっていきました。

――『劇場版』の物語としての見どころはどんなところにありますか?

TVシリーズのヴァイオレットはどちらかと言うと語り部となる部分が多く、彼女が代筆の仕事で出会ったさまざまな人たちの想いを紡ぐ構成になっていました。それに対して、今回の『劇場版』ではヴァイオレット・エヴァーガーデンの生き様そのものにフォーカスを合わせているので、そこが大きな見どころになると思います。

――「愛を描く物語」としての魅力もありますよね。

そうですね。幼い頃から“武器”として育てられたヴァイオレットはもともと感情というものがわからず、ギルベルトが告げた“愛してる”が分からなくて、それがどういうものなのかを探していました。TVシリーズではそんな彼女が多くの出会いを通して“愛してる”が少しは分かるようになるまでを描いていましたが、『劇場版』はまさにその“愛してる”をベースにした展開になっています。ヴァイオレットがどんな形で“愛してる”を実感するのか?そこをぜひ見届けて欲しいですね。

――そこでは彼女の成長や進化も見られそうですね。

そうですね。以前のヴァイオレットだったら、自分の感情がわからなかったこともあり、事象の赴くままに突き進んでいたと思うんですが、今では相手の気持ちもきちんと汲みとり、それを考えた上での行動をとるようになっています。そこが彼女の何よりも大きな成長ですが、自分の気持ちが分かるようになったことで、ヴァイオレットの“愛してる”はよりドラマチックで狂おしいものになっています。

――石立太一監督の持ち味や作品の魅力は?

画作りからレイアウト、アクションの作画に至るまで、こだわりや技術が高い監督です。また、ヴァイオレット・エヴァーガーデンという女性自身のことを我が子のように強く愛していますし、彼女の人生を預かり、しっかり描いていこうという覚悟を持っている所が、監督としての魅力でしょうか。

――その強い想いは台本からも感じられます。特にヴァイオレットと彼女をめぐる人たちの複雑な想いがうねりを上げて絡み合うクライマックスは、ドラマも映像も凄まじいものになりそうで楽しみです。

石立監督の熱量がスゴいですからね。街並や風景、アクションからヴァイオレットの見せ方まで、すべてのカットがダイナミックかつ繊細に描かれています。ちょっとしたディテールも一切妥協しない、こだわりもギリギリまで極められています。
この作品は当初から世界中の人たちに届けたいという思いもあって展開してきました。作品をより良いものにしたいという監督の気持ちが制作する姿勢から伝わるので、スタッフも必死でくらいついて、一丸となって制作しています。

――『外伝』に続き、『劇場版』は画面の比率がTVシリーズの16:9とは違う横に広い2.31:1という映画ならではのサイズですが、そこにもこだわりがありますか?

この画面サイズでの制作を最初に提案したのは藤田監督で『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を映画館で観る適切な映像作りとはなんなのか、石立監督とディスカッションを重ねていました。それによって空や海、山々が広くダイナミックに描かれています。制作で使用する紙のサイズも構図に必要なエッセンスも変わるので、『外伝』に引き続き、制作陣にとっても挑戦となる作品になりました。

――キャラクターデザイン&総作画監督の高瀬亜貴子さんの手腕を楽しみにしているファンも多いと思います。

高瀬さんも、ヴァイオレットはこういう女性であって欲しい、ギルベルトはこういう男性であって欲しいという自分の中のストーリーやビジョンが明確にある方なので、それがキャラクターの個性や強度になっています。彼女の描く人物が魅力的なのは、そこが大きいと思います。

――完成間近の『劇場版』、2時間を超える大作になりつつあるということですが、これも石立監督と制作スタッフの皆さんがこだわり抜いた結果ですね。

ヴァイオレット・エヴァーガーデンというひとりの女性の人生をしっかり預かり、描くこと。『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』をきちんと作るなら、これだけの時間が必要だったという監督の責任感の表れでもありますね。

――今回の『劇場版』から『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の世界を知る人もいると思いますが、その人たちも楽しめる作品としても期待できますか?

『劇場版』だけをご覧いただいても、十分楽しめるものになっています。ヴァイオレット・エヴァーガーデンという女性の普段の仕事やその時々の心情を切り取り、彼女と関わる人たちやその想いはこれまでと変わらず丁寧に描かれていますので、この作品の観易さや入り易さはTVシリーズの頃から変わりません。『劇場版』をご覧いただいてから、彼女の生き様が気になったのであれば、TVシリーズや原作に触れていただいて、それらを踏まえてからもう一度観ていただけたら物語により深みが出て、さらに楽しいかと思います。

――最後に、『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を楽しみにしている世界中のファンにメッセージをお願いします。

『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』はTVシリーズから始まったこの作品のフィナーレとなるものです。スタッフが精一杯の想いを込めて作り、石立監督も脚本の吉田玲子さんもこれ以上は描けない、という所まで極めています。ヴァイオレットという女性の生涯を一緒に温かく見守っていただけると嬉しいです。この作品を観ていただいたファンのみなさんと気持ちを共有して、その想いを未来に繋いでいけたらと強く望んでいます。ありがとうございました。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』シリーズプロデューサー 八田真一郎

『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』
2020年4月24日 劇場公開