劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』
アニメーション制作風景

『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の心に残る1カットを紐解きながら、アニメーション制作の行程をご紹介いたします。

1.シナリオ(脚本)

監督・石立太一さん、脚本・吉田玲子さん、世界観設定・鈴木貴昭さん、委員会のプロデューサー、その他主要スタッフが集まって、シナリオ作りのための打合せ(本読み)を行います。
シナリオで作品の方向性、物語の展開やセリフなどが確定します。

2.絵コンテ

「絵コンテ」は、監督や演出スタッフが手掛けます。
「絵コンテ」は映像の設計図。すべてのカット、シーンをどんな映像にしたいかが全スタッフに伝わるように様々な情報が記入されます。キャラクターの動き、表情、芝居、心情、映像技法の指示等が分かるようになっています。
『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』では石立太一監督が全ての絵コンテを手がけました。

3.レイアウト

「絵コンテ」が完成すると、それぞれのシーンの描画を担当する原画スタッフを決定します。
原画スタッフが「レイアウト・原画」を手がけます。
「レイアウト」は「絵コンテ」をさらに紐解いた完成画面の設計図です。より細やかにキャラクターの動き、表情、芝居、映像技法の指示が記入されます。この「レイアウト」を元に、キャラクターの描画、背景制作が始まります。

4.原画

「レイアウト」を元にキャラクターを描き起こします。
「原画」には主に「芝居や動きのタイミングを作る」行程と、「動きを作るために描いた絵に繊細な表現を描き足し、清書する」という行程があります。「原画」では、原画スタッフに加え、総作画監督や作画監督、演出スタッフなど、多くのスタッフの手を経て、キャラクターが描かれていきます。

5.動画

「原画」が完成したら、作業は動画スタッフにバトンタッチ。
「動画」では、「原画」の線を「クリンナップ(清書)」する作業と、「中割(なかわり)」という作業を行います。
「原画」で描かれる線はスキャンには不向きで、そのままではデジタル化しペイントすることができません。そこで「クリンナップ(清書)」という作業で、「原画」の線を均一な線に改めて描き起こします。
「中割」とは、原画と原画の間に絵を入れることで、芝居の動きを滑らかに見せるための技法です。
『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』では、「レイアウト・原画・動画」は全て紙に鉛筆で描いて制作されました。ちなみに京都アニメーションでは、「レイアウト・原画・動画」のことはまとめて「作画」と呼んでいます。

6.ペイント

「動画」でクリンナップされた絵は、スキャナーで取り込みデジタル化されます。
そして、色彩設計スタッフや、色指定スタッフが指示した色に、ペイントスタッフが着色を施します。
1枚1枚、瞳や髪のニュアンスが崩れないように丁寧にペイントされていきます。

7.美術背景

「原画・動画・ペイント」が進行している一方で、「レイアウト」から美術背景が描き起こされます。美術監督や演出スタッフの元で、そのカットにおける描画の方向性や色合いなどが検討され、美術背景スタッフが背景画を描いてゆきます。ヴァイオレットに隠れてしまう船の側面も彼女が引き立つように、かつ丁寧に描画されます。

8.撮影

撮影は、映像を完成させる最後の工程です。
ペイントまで仕上がったキャラクター(※セル)と美術背景を組み合わせ、ここから様々な撮影処理やカメラワーク、3DCGを加えていきます。
『劇場版 ヴァイオレット』では、水、海の波、雨や雪等は撮影スタッフによって制作されました。3DCGスタッフが活躍したカメラワークやキャラクターの表現もたくさんあります。

9.完成

こうしてカットが完成です。
この後、ひとつずつ制作されたカットを組み合わせて、より心地よいタイミングや見せ方に調整する「編集」の作業、編集された映像にキャラクターの声の芝居を収録する「アフレコ」、効果音や音楽を乗せていく「音響」の作業、映画フォーマットへの変換の作業、様々な工程を経て皆様へお届けする映画が完成します。

たくさんのスタッフのこだわりと思い、培われた技術によって、「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は完成いたしました。どうぞ引き続き、映画をお楽しみください。

11月12日に開催された『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』スタッフトーク付き上映会にて、制作スタッフが『劇場版 ヴァイオレット』の映像ができるまでの深いこだわりを語っていただいおります。合わせてご覧ください!
『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』スタッフトーク付き上映会レポート